セラピストはどんな職種?役立つ資格と学習方法を解説
日々の仕事や家事、子育てに忙しいと、心身ともに疲労が蓄積し体調を壊してしまうこともあります。人々の疲れやストレスを軽減し、健康的に過ごすためのサポートをする職種としてセラピストがあります。しかし、セラピストといってもその定義は曖昧で、職種も多岐にわたります。
そこで今回は、セラピストのなかでも代表的な職種を紹介するとともに、セラピストとして活動するうえで役立つ資格についても解説します。
目次
セラピストとは
セラピストとは日本語で「療法士」ともよばれ、その名の通り心身の不調を癒やす人のことを指します。セラピストに該当する職種は幅広く、専門資格をもつマッサージ師も広い意味ではセラピストにあたります。その一方で、専門資格をもたなくても従事できるエステティシャンやアロマセラピストなどもセラピストに含まれます。
人の身体と精神は表裏一体でつながっており、病気や怪我などをしていないにもかかわらず、精神が不安定になると身体に不調をきたすことも少なくありません。そのような意味で、心身を癒やしながら精神的な不安を緩和してくれるセラピストは、私たちの生活に身近な存在になりつつあるのです。
仕事やプライベートにかかわらずストレスが多い社会において、少しでも多くの人を癒やすため、セラピストを目指す人も増えています。
セラピストの職種と資格の種類
セラピストという職種は幅広く、多様な職種が含まれることを紹介しましたが、だからこそ幅広い知識や経験が求められます。セラピストの職種を細分化すると膨大な種類におよぶため、今回は大きく5つの種類に分け、それぞれの職種に対応した資格について紹介します。
なお、職種によっても資格が必須の場合もあればそうでない場合もあるため、そちらも含めて詳しく解説しましょう。
医療系セラピスト
医療系セラピストとはその名の通り、専門的な資格をもち医療行為を行うことができるセラピストのことを指します。具体的には以下の5つの職種が挙げられます。
理学療法士
病気や怪我、加齢によって筋力が低下した患者に対し、運動機能の回復を目的としてリハビリを支援する職種です。
理学療法士として働くためには理学療法士国家試験に合格する必要があり、受験資格を得るための条件として大学や短大、専門学校の専門課程を修了しなければなりません。なお、試験の合格率は80%程度と高い傾向にあります。
作業療法士
理学療法士と同様、リハビリを支援する職種ですが、日常生活が困難になった重度の患者を対象としています。歩く・起き上がる・座るといった動作に加えて、食事や排泄といったリハビリも含まれます。
作業療法士になる際も、大学や専門学校で所定の専門課程を学び、作業療法士国家試験に合格しなければなりません。試験の合格率は理学療法士と同様、80%程度となっており、落ち着いて挑めば決して難しい試験ではないでしょう。
柔道整復師
脱臼や捻挫、打撲などによって、筋肉や関節を損傷した患者に対し、回復を支援する職種です。
柔道整復師になるためにも国家試験に合格する必要があり、受験資格を満たすためには大学や専門学校で所定の専門課程を修了することが条件となります。また、国家試験そのものは筆記試験ですが、それ以前に認定実技試験を通過していなければなりません。
理学療法士や作業療法士に比べると難易度はわずかに上がりますが、それでも国家試験の合格率は60%程度と高めです。
あん摩マッサージ指圧師
筋肉を揉んだり指圧したりしながら、身体の痛みや凝りを和らげる施術を行う職種です。一般的に「マッサージ師」とよばれることもあります。
あん摩マッサージ指圧師も大学や専門学校の卒業後、国家試験に合格することが条件となります。試験そのものの合格率は80%程度と高いですが、あん摩マッサージ指圧師の受験資格を満たすカリキュラムを提供している学校はそれほど多くありません。自宅から通える範囲に学校がないことも考えられるため、あん摩マッサージ指圧師の資格取得を検討している方は事前に確認しておきましょう。
鍼灸師
針や灸を用いてツボを刺激することで、身体の痛みや凝りを和らげる施術を行う職種です。
上記で紹介した4つは、職種そのものが資格の名称となっていますが、鍼灸師になるためには「はり師」と「きゅう師」の2つの資格をもつ必要があります。「鍼灸師」という名称の資格は存在しないため注意しましょう。
はり師ときゅう師になる際にも、大学や専門学校を卒業後に受験資格が与えられた後、国家試験に合格する必要があります。はり師ときゅう師の合格率はそれぞれ70%程度となっており、落ち着いて試験に挑めば十分に合格できるはずです。
ボディ系セラピスト
ボディ系セラピストとは、医療行為にあたらない範囲で、身体に直接触れてさまざまな施術を行うセラピストのことを指します。具体的な職種および資格の例としては、以下の3つが挙げられます。
エステティシャン
主にアロマオイルを使った施術や、リンパに沿ったマッサージなどによってリラックス効果を与える施術を行う職種です。
エステティシャンになるためには医療系セラピストのように必須資格はありません。国家資格も存在せず、もしエステティシャンとしてのスキルアップやキャリアアップを目的とするのであれば民間の団体が運営している資格に挑戦してみましょう。
代表的な資格としては、一般社団法人 日本エステティック協会が認定している「AJESTHE認定エステティシャン」や、日本エステティック業協会の「AEA認定エステティシャン」などがあります。
リフレクソロジスト
足つぼマッサージが代表的ですが、足裏や手のひらなどのツボを刺激することで疲労改善を促す施術を提供する職種です。
リフレクソロジストになるための必須資格や国家資格も存在しないため、スキルの証明にあたっては民間団体が認定している資格に挑戦してみましょう。代表的な資格としては、日本ヒーリングリラクセーション協会が認定している「リフレクソロジー・プロライセンス実技士資格」や、「JREC認定ライセンス」などが挙げられます。
カイロプラクター
”骨盤矯正”とよばれることも多く、身体の歪みを矯正し身体のさまざまな不調改善につなげる施術を提供する職種です。
カイロプラクターにも必須資格や国家資格は存在しません。客観的にスキルを証明したり、スキルアップやキャリアアップを目的に何らかの資格を取得するのであれば、スクールや通信講座などで所定の課程を修了したことを証明するのもおすすめです。
メンタル系セラピスト
ボディ系セラピストとは対照的に、フィジカル面ではなく精神面でのケアを図るのがメンタル系セラピストです。具体的な職種および資格としては以下の2つが挙げられます。
臨床心理士
臨床心理士の資格を有し、心理テストやカウンセリングなどによって精神面でのケアを行う専門職です。メンタルクリニックなどにおいても臨床心理士の需要は高く、ストレス社会において欠かせない職種といえます。
臨床心理士を名乗るためには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格に合格する必要があります。受験資格を得るためには、指定の大学院を修了していること、または臨床経験を2年以上有した医師免許取得者といった厳しい条件があり、受験そのもののハードルが高いといえるでしょう。
心理カウンセラー
対話を繰り返し、問題解決を援助したり、心理的な負担を和らげたりするカウンセリング行為を専門に行う人のことを心理カウンセラーとよびます。心理カウンセラーもさまざまな種類があり、たとえば職場での悩みに対応する人は産業カウンセラー、学校で児童や生徒をフォローするスクールカウンセラーも存在します。
臨床心理士と似た意味で使われることも多いですが、臨床心理士を名乗るためには資格が必須であるのに対し、心理カウンセラーには必須資格がありません。ただし、スクールカウンセラーについては臨床心理士の資格を有していることが必須となります。
2018年からは「公認心理師」とよばれる国家資格が創設され、大学および大学院で所定の科目を履修することで受験資格を得られます。
ヒプノセラピスト
催眠によって潜在意識に働きかけ、心理的な不安や問題を解消に導く人のことをヒプノセラピストとよびます。心理的な不安を抱えている人のなかには、本人が感知しない心の奥底に原因が潜んでいることもあります。催眠による療法は多種多様で、幼少期にさかのぼって原因を探ることもあれば、理想の姿をイメージさせることで前向きな気持ちに反転するといった方法もあります。
ヒプノセラピストになるための必須資格はありませんが、日本臨床ヒプノセラピスト協会の認定スクールでコースを修了すると認定証が授与されます。
リラクゼーション系セラピスト
医療的、または心理学的なアプローチとしてのセラピーだけではなく、人間の五感を刺激することで癒やしの効果を与えるリラクゼーション系のセラピストも存在します。特に有名な2つの職種と資格を紹介しましょう。
アロマセラピスト
アロマセラピストとはその名の通り、エッセンシャルオイルなどを用いてリラクゼーション効果を与える施術を行う専門職です。アロマセラピストとして活躍するには、エッセンシャルオイルや皮膚科学に関する知識、トリートメント技術といった多様なスキルが求められます。
一方で、アロマセラピストになるために必須となる資格はなく、十分な知識や経験、スキルがあれば第一線で活躍することも可能です。もし、スキルアップやスキルの証明を目的に資格取得を目指すのであれば、公益社団法人日本アロマ環境協会が認定している「アロマ検定」や、日本アロマコーディネーター協会が認定している「アロマコーディネーター」などに挑戦してみると良いでしょう。
ミュージックセラピスト
ミュージックセラピストとは、音楽を活用したセラピーを行う専門職です。音楽によって癒やしを与えるだけでなく、自閉症や発達障害をもつ子ども、アルツハイマー病などを患っている高齢者などにも実際に用いられています。
アロマテラピーに比べると、日本においてミュージックセラピーは一般的とまではいえず、公的な資格制度も充実していません。資格の種類は少ないですが、ミュージックセラピストのスキルを証明するものとしては、日本音楽療法学会が認定している「学会認定音楽療法士」、および全国音楽療法士養成協議会が認定している「音楽療法士(専修・1種・2種)」があります。
その他のセラピスト
ここまで例として挙げてきたセラピスト以外にも、ジャンルを問わずさまざまなセラピストが存在します。なかでも特徴的なセラピストとして、2つの職種を紹介しましょう。
ハーブセラピスト
食材としてさまざまな場面で活用されているハーブを、癒やしの観点から活用する専門職がハーブセラピストです。ハーブのスペシャリストともいえる職種で、ハーブのさまざまな活用方法やブレンド、栽培方法などもマスターします。
ハーブセラピストになるために必須の資格はありませんが、日本ハーブセラピスト協会では「ハーブ検定」を運営しており、1級に合格し上級講座を受講することで「ハーブセラピスト認定試験」を受験できます。その後、協会への会員登録を行うことでハーブセラピストとして認定され、インストラクター認定試験といった上位資格にも挑戦できます。
薬膳セラピスト
薬膳料理の効能を正しく理解し、心身の健康維持に役立てるのが薬膳セラピストの役割です。薬膳料理のレシピ開発やセミナーなどを通して、多くの人に薬膳の素晴らしさを伝える活動を行っている薬膳セラピストも存在します。
ハーブセラピストと同様に、薬膳セラピストになるために必須となる資格はありません。そのため、薬膳に関する知識や経験さえあれば活躍できますが、資格や検定をもっていれば客観的にスキルを評価されやすく、活躍の幅も広がっていくでしょう。
具体的な資格としては、日本中医食養学会が認定している「薬膳アドバイザー」が挙げられます。薬膳初級講座を40時間以上受講することで認定され、上位資格である「中医薬膳指導員」や「中医薬膳調理師」などにも挑戦可能です。
セラピストになるための学習方法とは?
これからセラピストを目指すにあたって、具体的にどのような方法で学習をすれば良いのでしょうか。目指す職種によっても学習方法はさまざまですが、働きながらでも無理なく学習できる3つの方法を紹介しましょう。
通信講座で学ぶ
今の仕事で働きながら自分のペースで学習を進めたい方には、通信講座がおすすめです。たとえば、アロマセラピストになるために不可欠なアロマテラピーや、心理カウンセラーになるための専門知識を得られる通信講座も存在し、自宅にいながらスキルを身につけられます。
通信講座で注意しておきたいポイントとしては、ほとんどの場合、標準学習期間やサポート期間が決められていることです。サポート期間が終了すると、テキストのなかで分からないところがあったとしても対応してもらえなくなるため注意が必要です。
スクールに通いながら学ぶ
自宅で受講する通信講座では勉強が続かなかったり、働きながらでも短期集中型でセラピストのスキルを身につけたい方にはスクールに通う方法がおすすめです。
資格取得に特化したカリキュラムを提供しているスクールも多く、あらかじめ定められた履修時間のなかで必要な知識やスキルを網羅的に学ぶことができます。なお、一般的なスクールは数十時間程度のカリキュラムが設けられている場合が多く、数ヶ月や半年間にわたって知識やスキルを身につけます。
これに対し、大学や専門学校は1年単位での通学が基本であり、特定の資格取得を目指すというよりは学部やコースに応じた幅広い知識を身につけることを目的としています。医療系セラピストのように、大学や専門学校を卒業すること自体が受験資格として定められている資格もあるため注意しましょう。
独学で学ぶ
テキストやDVD、動画サイトなどで知識やノウハウを学ぶことも可能です。通信講座やスクールへ通うよりも大幅にコストを抑えられ、自分のペースで好きな時間に勉強できるのも独学のメリットといえるでしょう。
ただし、当然のことではありますが、独学の場合は通信講座やスクールとは異なり、分からないところがあってもサポートしてくれる人が存在しません。友人や知人、家族など、身近なところに専門知識をもった人がいる場合は別ですが、一般的には自分自身で情報収集し解決しなければなりません。
セラピスト資格を取得するためにかかる費用
セラピストの職種は幅広く、資格の種類もさまざまであることが分かりましたが、セラピストに関連する資格を取得する場合、どの程度の費用がかかるものなのでしょうか。資格によっては大学や専門学校の卒業が必須であったり、受験資格はなく通信講座でも取得可能な手軽な資格も存在します。
そこで、学習方法に応じた資格取得費用の概算金額を紹介しましょう。
通信講座
通信講座の受講費用は、資格の種類や学習コース、提供している企業によってもまちまちですが、一般的に5〜10万円程度のものが多いです。このなかにはテキストやDVD、問題集、その他必要な教材などが一式セットになっており、基本的に受講費用のみで収まります。
また、通信講座によっては期間限定のキャンペーンや、インターネット受付による割引などを行っている場合もあり、これらをうまく活用することで費用を最小限に抑えることもできるでしょう。
スクール・専門学校
特定の資格に特化したコースを学べるスクールでは、数十万円程度の費用がかかるケースが一般的です。数ヶ月、または半年程度の通学を基本としており、所定のカリキュラムをこなせば短期間での修了も可能。費用はスクールによってもまちまちですが、数十万円程度の場合がほとんどです。
これに対し、1年単位での通学が必須の専門学校では、年間で50〜100万円程度の学費が必要です。また、学費以外にも入学金や教材費などが別途発生することも多く、スクールに比べると費用は高額になりがちです。
独学
独学の場合はテキストやDVDといった教材があれば学習できるため、費用は大幅に安く抑えられます。資格の種類によっても異なりますが、テキストや問題集は数千円程度。複数のテキストを購入しても、数万円以内で収まる可能性は高いでしょう。
さらに、YouTubeをはじめとした動画サイトやWebサイトでは無料で情報収集することもできます。
セラピストとして自分がどの職種に向いているか分からない場合には、まずはテキストやインターネットを活用した学習から始めてみるのも良いでしょう。
セラピストはどんなところで活躍できるのか
幅広い職種があり、世代や性別を問わずさまざまな人に癒しを与えるセラピスト。それだけに、セラピストが活躍できる場は多様です。具体的にどのような活躍の場が用意されているのか、代表的な3つの例を紹介しましょう。
医療機関
病院や治療院をはじめとした医療機関では、医療系セラピストの需要が高く活躍の場が用意されています。特に、長期にわたって入院を余儀なくされている患者の場合、精神的な負担が増大しがちです。そのような精神的な負担を軽減するためにも、セラピストは欠かせない存在といえるでしょう。
また、理学療法士や作業療法士といった有資格者は、患者のリハビリをサポートするうえで不可欠であす。
さらに近年では、患者が抱える心理的な問題をサポートするため、アロマセラピストなどの活躍の場も増えています。海外の一部の国では、ミュージックセラピストやハーブセラピストなど、多様なセラピストが医療の現場で活躍している現実もあります。
日本ではリラクゼーションを目的として認識されているものも、今後医療の現場に導入されるケースは増えてくる可能性もあります。
リラクゼーションサロン
街のなかや駅前などにあるリラクゼーションサロンでは、肉体の疲労を軽減するためのマッサージやケアを提供しています。人によっても疲労の度合いや症状はさまざまで、利用者とコミュニケーションをとりながらそれぞれに対応した施術が求められます。専門的な知識やスキルをもったセラピストは欠かせない存在といえるでしょう。
セラピストとして十分な経験を積み高度なスキルを身につければ、リピートの顧客も獲得できるようになり、独立開業の道も見えてきます。
学校・福祉施設
学校や高齢者が利用する福祉施設においてもセラピストの需要はあります。
小学校や中学校、高校などにおいて、多感な時期を過ごす児童・生徒は、人間関係や学校生活のこと、自身の成績のことなど、さまざまな悩みを抱えているもの。周囲に頼れる人がおらず悩みを一人で抱え込んでしまうと、不登校になるケースもあります。子どもが抱える心理的な問題を軽減するために、心理カウンセラーをはじめとしたセラピストは欠かせない存在といえるでしょう。
また、高齢者や身体に障がいをもった方が利用する福祉施設においても、利用者はさまざまな問題を抱えていたり、心理的な負担が増大したりするものです。また、身体の不自由な方のリハビリをサポートするためにも、作業療法士の資格をもった医療系セラピストは欠かせない存在といえます。
まとめ
多くの人々の心身を癒したり、健康維持のサポートをするために欠かせないセラピスト。今回紹介してきたように、セラピストにはさまざまな職種が存在し、特定の資格をもっていなければ従事できない仕事もあります。
自分自身が今後どのようなセラピストを目指すのかを考え、それにマッチした資格の取得に向けて学習しましょう。